十字軍の思想

山内進(著) 筑摩書房

「聖戦」という言葉は、今ではイスラムのテロ行為を正当化するための代名詞となっている。しかし、それが歴史の中で形となって現われたのは、中世ヨーロッ パのカトリック世界においてであった。そこでは、異教徒に支配されている「聖地エルサレム」の奪還を旗印として、「十字軍」が構想された。ローマ教皇と教 会法学者は、十字軍による非ヨーロッパ世界の征服・略奪を、道徳的にも法的にも正当化していた。その流れの中から登場したのが、「新しいイスラエル」アメ リカである。今日、アメリカの突出した行動を支える思想として甦りつつある「十字軍」と「聖戦」思想の歴史をたどり、キリスト教世界の深層心理を探る。amazon:十字軍の思想-ちくま新書-山内-進

「興亡の世界史」シリーズに、十字軍の記述を探すもない。そこで関連書籍を探すと、廃盤のコレが気になりました。中世最大の出来事かと思う割に、知らないことが多い。塩野七生がシリーズを刊行したようですね。さすがというか、いいトコ突きます。
十字軍研究には、パレスチナへの7回の遠征を重視する一派と、その他地方への遠征も重視する一派に別れるという。著者は後者で、さらに現代に続く十字軍的なもの・思想まで取り上げる。アメリカ建国もその一つとし、その後の世界戦略に類似性を見いだす。言われてみるとありがちな考えに見えるけど、初めて気付かされました。説得力がある面白い説。
遥か昔でとっくに断絶してるかに見える中世ヨーロッパの水脈が、今も地下に流れ続けてるんですね。好ましいことではありません。
十字軍の思想 (ちくま新書)
十字軍の思想 (ちくま新書)