沈まぬ太陽(1)

山崎豊子(著) 新潮社

国民航空社員で同社の労働組合委員長を務めた恩地元と彼を取り巻く人々の描写を通して、人の生命に直結する航空会社の社会倫理を表現した作品である。日本航空とその元社員である小倉寛太郎、単独機の事故として史上最悪の死者を出した日航ジャンボ機墜落事故などがモデルとされている。wikipedia:沈まぬ太陽

著者の作品はたびたび映像化され、その度大変な評判になります。凄まじい人気は、国民的作家と呼べるほど。私は学生時代に「不毛地帯」を読んだっきり。超長編が多いものですから。今回は映画化とJALの事実上の倒産というタイムリーな状況が重なって、久々に読んでみました。

作者は実は男じゃないかと文体から思ってしまう、骨太な内容。多くの人がなんらかの組織に所属する以上、特に社会人男性にとってはどこかリアルでよう。労組のトップとして、予定調和を拒んだ闘争をしたことによる懲罰人事を受け、カラチ・テヘラン・ナイロビと僻地勤務を強いられる主人公恩地。特にカラチの風土の描写が極悪。当時と今じゃ変化はあると想像はしますが、相変わらず政情不安定な国。それほど改善されてないかもしれません。外務省のホームページの情報でも、物騒な言葉が並んでいます。
小説の舞台となった時代と現在では、一緒に考えられないとはいえ、私など組織にたてついて何かを訴える勇気など、ほとんどないですね。だから、主人公恩地の置かれた立場には、ある程度自業自得にも見えます。
もっとも、本人に無断で委員長と発表されたいきさつは、気の毒でなりませんが。
沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)
沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)