原発と権力
山岡淳一郎(著) ちくま新書
戦後日本の権力者を語る際、欠かすことができない原子力。なぜ、彼らはそれに夢を託し、推進していったのか。忘れ去られていた歴史の暗部を解き明かす一冊。amazon:原発と権力-戦後から辿る支配者の系譜-ちくま新書-山岡-淳一郎
「逆コースから始まる」と本書で表現されるように、最初にGHQなどを通じて原子力の情報を集めたのは、巣鴨から釈放された戦犯達。アメリカは日本を「反共の防波堤」にすべく、協力的な軍国官僚や軍人、右翼を情報源として利用。その後、政界からは中曽根康弘、メディア界からは正力松太郎が具体的に動かす。この辺は他の書籍でも取り上げられてることが増えています。産業界では財閥系企業が結集。原子力が軍事と結びつくことを見越してのことである。「原発・正力・CIA」に似ていますが、扱う時系列や人の幅を広く見据えています。日本の核へのこだわりは、被爆国という核コンプレックスに基づいた、核兵器保有への熱望が大きな理由なんじゃないかという気がしてきます。
原子力政策から見直す戦後日本史・・・重要な場面に度々原子力が顔を覗かす。例えばプラザ合意。現在に至る日本の大不況の引き金となったこの取り決めも、当時の中曽根総理が原子力協定改定の内諾を得るためのものだったというのが本当ならば、強い怒りを覚えます。優先順位をはき違えています。