被差別部落の起源

寺木伸明(著) 明石書店

本書は、被差別部落の起源について論じた小文を集めて一冊にまとめたものである。被差別部落の起源と一向一揆との関連を重視する見解を強くうちだしてある。

部落問題というと、社会問題というくくり方では足りないほどに大きな存在感を持ってあるにも関わらず、その起源については確固たる定説がないという。「異民族起源説」「職業起源説」「古代起源説」などがあるなか、著者は「政治起源説」を採ります。職豊政権が一向一揆への壊滅と報復を狙って、それまで存在した差別も利用しつつ、徹底的に貶めたという説です。
士農工商の下の身分ということで、徳川政権が作ったような印象が一般にはあります。徳川方も利用したのは間違いありませんが、豊臣政権にその起源を求めるというのは、なかなか興味深く説得力がありました。
本願寺と差別との深い関係。資料を当たって検討されていくのですが、春に札幌でもあった「本願寺展」で触れられることも無い。扱いに慎重にならざるをえないとはいえ、あまりにも知られてません。
信長の統一事業にとりましても、対大名以上に本願寺との戦いは大きな部分を占めます。本願寺が大名と通じ合ってもいましたし。小説やドラマでは、桶狭間や長篠といった戦いに焦点が当てられがち。本当の肝は、本願寺戦のような気がします。
起源説につきましては、ここに書かれてるのはパーセンテージ的に見て大きいものの、古代から蝦夷や海外の捕虜など、その時々の反抗者が非差別の身に落とされたんじゃないか。自分は歴史の重要な一コマとして、正直言って関心があります。
被差別部落の起源