赤い人

吉村昭(著) 講談社

赤い囚衣の男たちが石狩川上流に押送されたのは明治14年のことだった。国策に沿ってかれらに課せられた死の重労働。鉄丸・鎖につながれた囚徒たちの労役 で原野が切り開かれていく。北海道開拓史の暗部に横たわる集治監の歴史。死を賭して脱走を試みる囚人たちと看守たちの、敵意にみちた命がけのドラマ。amazon:赤い人-講談社文庫-吉村-昭

 
司馬遼太郎の「街道をゆく」シリーズにおさめられている「北海道の諸道」に、以下のような文章があります。

北海道の樺戸集治監時代のことについては、吉村昭氏の「赤い人」(筑摩書房)があり、またタコ部屋史を科学的な態度で取材、調査し、堅牢に構成されたものとして、小池喜孝氏の「常紋トンネルー北辺に斃れたタコ労働者の碑」(朝日新聞社)がある。いずれも傑出した著作といっていい。
読んだあと、私など、数日ぼう然とした

北海道開拓の暗黒史は各地にあり、道内の主要な道路はほぼ彼らの手によるもの。囚人といっても、いわゆる犯罪者とは限らない。佐賀の乱萩の乱神風連の乱西南戦争秩父事件・・・といった明治の反乱で大量に発生した政治犯が多く含まれています。これは基本的に監獄が国家による暴力装置であることを教えてくれます。また、明治国家にとって北海道開拓が重要政策であることや、北海道の獄舎の過酷さが全国に知れわたった影響などを見ますと、この本に書かれてることが単に北海道の隠れた歴史であることにとどまらず、日本国にとっても決して忘れてはいけない過去であると考えます。
小池喜孝の著書は絶版になっているが、こちらで読むことが出来ます。
http://www.h2.dion.ne.jp/~cha2/essay/kaitaku/main.htm
赤い人 (講談社文庫)
赤い人 (講談社文庫)